体温

体温とは

人体の温度

 

▶︎種類

体表面温度 : 手足や顔などの温度、気温の影響を受け安定しない

深部体温 : 脳や臓器などの温度、働きを保つため安定している

▶︎基礎体温

安静状態の体温であり、その人にとっての最低体温である

 

 

▶︎測定部位

深部温度が反映されやすい脇、口、耳、直腸などで検温する
測定する部位ごとに時間や方法が異なり、温度も異なります

体温の測定には水銀温度計(水銀体温計)、熱電対温度計、サーミスター温度計(電子体温計)などが用いられる。

 

一般に人体内部は一様な恒温状態にあると考えられ、その温度を「核心温度」という。一方、体表面に近づくにつれて温度は低下するが、これは外殻を冷たい末梢(まっしょう)組織が囲んでいるためと考えられ、その温度を「外層温度」という。一般に直腸内の温度(直腸温)は核心温度を反映するものとされ、外界の気温にかかわらず約37℃と一定である。一方、皮膚の温度(皮膚温)すなわち外層温度は、皮膚の部位および外界の気温によってまちまちであり、手足はとくに低く、頭部や額はもっとも高い。外界の温度が30℃以上の場合、皮膚温はどこで測定しても34~36℃となるが、外界気温が20℃程度になると、頭部の皮膚温は約32℃に保たれるのに対し、足では26~27℃にまで低下する。しかし、皮膚温でも腋窩(えきか)(わきの下)を閉じた場合の温度(腋窩温)はかなり直腸温(体腔温)に近く、その差は約0.8℃である。したがって、通常の体温測定は腋窩で行われる。欧米では通常、口腔(こうくう)温が測定されるが、この場合はさらに直腸温に近く、その差は約0.5℃である。

 

 

体温の変化

平均体温はワキ下検温で36~37℃程度

 

※個人差がある

年齢、運動、時間、気温、食事、睡眠、女性の性周期、感情、病気など、さまざまな要因で変化するため個人差がでる

一般的には体温が37.5℃を超えると発熱とされますが、

「発熱」と判断すべき体温にも個人差があります。

▶︎年齢

子どもはやや高め、高齢者はやや低めが多い

 

▶︎1日の間でも変化する体温

概日リズム、日周期リズム

人体には24時間単位で体温変化するリズムがある

早朝が最も低く、夕方が最も高くなる
一般的には1日の間で1℃ほど体温は変動している

 

他の日の同じ時間帯にはかった体温と比べてみる必要があります。

 

 

体温はつねに一定のものではなく、安静に臥床(がしょう)していても1日を周期とする動揺を示す。これを日周期リズムという。その振幅は1℃以内で、午後3~6時がもっとも高く、午前5~6時がもっとも低い。こうした体温の日周期リズムは、徹夜をしても乱れないことから、目覚めと睡眠とによる代謝量の変化だけによっておこるものではないと考えられる。

 

 

▶︎ホルモンバランスの影響
女性の場合、ホルモンの作用による体温の変化も見られます。これは、排卵の後に分泌される「黄体ホルモン」と呼ばれるホルモンに、体温を上昇させる働きがあるためです。

通常、月経が始まると体温が下がり、排卵が起こるまでは低温期が、排卵が終わってからは高温期が2週間ほど続きます。排卵後に妊娠をしている場合は次の月経がなく、そのまま高温期が続きます。
ただし、低温期の長さは個人差があり、年齢やその時のコンディションによって変化する点に注意が必要です。

 

もっとも体温の低い早朝6時ころの体温を「基礎体温」という。女子の基礎体温は月経周期に関連して変動する。月経周期内で排卵期を境として基礎体温は上昇して高温相となり、ついで月経とともに基礎体温は下降して低温相となる。しかし、排卵がおこらない場合には高温相が現れず、また逆に妊娠中は全期間を通じて高温相が持続する。このような基礎体温の周期的変動は、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)が視床下部の体温調節中枢に作用するためであると考えられている。

 

 

 

運動や精神的興奮

によっても体温上昇がおこる。とくに高温下で激しい運動をすると、直腸温は40℃にまで上昇することがある。

 

また、細菌感染などによって体温が上昇した状態を発熱というが、

これは細菌の毒素、あるいは組織タンパクなどの異常分解産物が発熱物質として作用するためであると考えられている。体温の上限は44~45℃であり、これ以上では酵素などのタンパク質が非可逆的に変性し始め、急速に死に至る。体温の下限は33℃で、これ以下では意識が失われるが、身体の組織細胞自体は低温によく耐えることができる。

 

▶︎日頃から自身の平熱を知っておくことが大切です。

基礎体温をはかる場合
基礎体温は、体を動かす前の安静状態時にはかるのが原則です。毎朝布団から出る前の、決まった時間に計測すると良いでしょう。
基礎体温を測る際は、細かな体温変化を確認しやすい婦人体温計を活用するのがおすすめです。

 

平熱をはかる場合
前述の通り、人間の体温は1日の中でも1℃ほど変化していて、部位によって温度も異なります。平熱を測る際は、朝と夜など、1日の中で異なる時間に同じ部位で検温を行い、時間帯ごとの平熱を出しておくと良いでしょう。
食事や入浴、運動をした直後などは体温が上がりやすいので避け、安静な状態で計測するのがポイントです。

また、1日だけ検温を行っても、正しい数値をはかれているとは限りません。何日かに渡って、同じ時間に体温をはかり続ける必要があります。
具体的な検温方法は、ワキや耳、口など、検温する部位や使用する機器によって異なるので、体温計の使い方を確認しておくことも大切です。

そのため、それぞれを知る必要がある

 

 

 

体温調節

 

熱産生と熱放散のバランスで一定の温度に保たれている

一定の温度を維持するのは代謝に関わる酵素と呼ばれるタンパク質が関係しています。

 


ヒトの体は環境に合わせて体温調節する機能が備わっていて、10℃や20℃の気温変化なら順応して生活することができます。

ただし、体温そのものの変化の許容範囲は、そんなに広くありません。体温が34℃以下になると低体温症になり生命の危機となります。逆に43℃を超えて生存することも難しいとされています。
このように体温調節は、私たちが生きていくうえで、どうしても必要な、そしてとても重要な機能なのです。

 

 

熱産生と熱放散のバランスで一定の温度に保たれている

・熱産生が熱放散を上回ると体温は上昇します
・熱産生が熱放散を下回ると体温は下降します

 

 

 

 

 

▶︎熱が発生

私たちが日々、口にしている食べ物は、体のなかで必要な栄養素に分解されたり、細胞が活動する時に必要なエネルギーに転換されたりしています。このような体のなかで起きている化学反応のことを代謝といいます。

 

体温が一定に維持されるためには、体内における熱の産生と、体外への熱の放散とが平衡していなければならない。

つまり、外界の気温が低下した場合は、熱の放散を減少させると同時に熱の産生も増加して体温の低下を防ぎ、逆に外界が高温となった場合には、熱産生の減少と熱放散の増加がおこるわけである。

 熱産生促進の機序(メカニズム)として第一に「ふるえ」をあげることができる。ふるえは骨格筋の不随意収縮であり、これによって骨格筋による熱産生は増加する。また、寒冷時には甲状腺(こうじょうせん)ホルモンや副腎髄質(ふくじんずいしつ)のアドレナリンとよばれるホルモンの分泌が増加し、全身の代謝が亢進(こうしん)する。さらに、これによる血糖利用率の上昇によって食欲が亢進する。逆に外界が高温のときには食欲減退、甲状腺ホルモンの分泌低下などによって熱の産生は抑制される。

 熱放散促進の機序としては皮膚血管の拡張および発汗がある。皮膚血管が拡張すると皮膚温が上昇し、皮膚からの熱放散が増加する。また、発汗は蒸発熱の放散を促進する。イヌなどでは「熱あえぎ」がおこり、口腔からの蒸発が盛んとなる。寒冷時には皮膚血管が収縮して皮膚温が下がり、熱放散は抑制される。

 温度感覚は皮膚に散在する感覚受容器によっているため、皮膚血管が収縮して皮膚温が低下すると寒く感じ、逆に飲酒などによって皮膚血管が拡張すると温かく感じる。ただし、この場合は感覚としては温かくても、熱の放散はより増大しており、体温調節のためには不利となる。また、動物などでは寒冷時には毛が逆立ち(立毛(りつもう))、皮膚に密接している空気の層を厚くすることによって熱放散を抑制する。ヒトでも、立毛の名残(なごり)として寒冷時に「鳥肌がたつ」が、体毛が少なく、また短いため、熱放散抑制のためにはほとんど無意味といえる。

 

 

 

▶︎熱の放散

体のなかの温度が上がりっぱなしになることはありません。熱産生と熱放散のバランスが取れていると、体温は一定に保たれます。

 

 

 

 

 

 

 

役割

酵素の働きに欠かせない重要なものです

 

生体内における物質代謝の結果、遊離されるエネルギーのうち3分の1ないし4分の1は機械的、化学的、電気的その他の仕事として役だつが、ほかはすべて熱として消費される。この熱は体の表面から放散したり、尿や便とともに体外に排泄(はいせつ)されるが、同時に身体を温め、体温を保つ働きももっている。ヒトの体温はだいたい37プラスマイナス1℃の範囲にあり、通常はほぼ一定に維持されている。このように体温が一定に保たれることによって、体内ではいろいろな酵素の作用をはじめ、諸種の化学変化の反応速度が一定に保たれることになる。

 

 

動物の体温

 

動物の体温目次を見る
動物のなかでは哺乳(ほにゅう)類と鳥類は体温調節能力が高く、環境温度から独立してつねにほぼ一定の体温を保つので恒温動物といわれる。また温血動物ともいう。これに対して爬虫(はちゅう)類以下の動物は変温動物または冷血動物とよぶ。恒温動物でも体の部位によって温度が異なり、表層より深部のほうが温度が高い。体温は腋窩、口腔(こうこう)、直腸で測る。ヒトや哺乳類の多くは36~38℃、哺乳類のあるものや鳥類の多くはそれより高い40~42℃を保っている。しかし1日のうちでも多少の変動があり、ヒトは夜明け前が最低で、午後1~6時が最高である。体温調節能力は生まれたばかりのときは未発達であり、徐々に完成してくる。

 体熱の源は体内の物質代謝に伴う発熱反応(内温性という)で、おもに肝臓と筋肉で発生する。筋肉では遊離エネルギーの4分の3が熱となり、4分の1が仕事に利用される。冬眠動物が冬眠から覚醒(かくせい)するときには、肩甲骨の近くに分布している褐色脂肪組織の産熱が働いている。高体温の維持には体毛、羽毛、皮下脂肪層の発達が役だっている。変温動物でも外気温が低下したときには筋肉活動を増して体温を上げることが魚類や昆虫で知られている。また、変温動物でも太陽熱を吸収して体温を高めること(外温性)がある。たとえば、トカゲの体温の変化は日光に対する定位の変化によっている。

 環境温度は、皮膚にある冷点や温点で情報を得て、脳にある体温調節中枢が感じる。そこから運動神経や自律神経が出て体温調節に働いている。神経系とは別に、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、成長ホルモンなどのホルモンが物質代謝の速度を左右することにより体温を調節する。寒冷刺激によりこれらのホルモンの分泌が高まり、肝臓や筋肉の物質代謝が高まる。一方、交感神経は立毛筋、血管に対して興奮的に作用し、熱放散量を減少させる。